♪Tom Traubert’s Blues (Four Sheets to the Wind in Copenhagen)/トム・ウェイツ
疲れ果てて傷ついてしまったんだ
月のせいじゃねぇ
身から出た錆ってことよ
明日会おうな
おい、フランク
2〜3ドル貸してくれねぇかな
放浪の旅に出よう、そう旅をするんだ
お前は俺と一緒に旅に出るんだ
1976年にトム・ウェイツが発表した6分40秒の名曲「Tom Traubert’s Blues」は、こんな歌い出しから始まる。
この曲は、彼が初めて全米アルバム・チャートのトップ100にランクインしたアルバム『Small Change』に収録されている。
1992年には、ロッド・スチュワートがシングルリリースし全英チャートで6位となり、5週連続トップ10にランキングされた。
♪Tom Traubert’s Blues/ロッド・スチュワート
それは1stアルバム『Closing Time』のリリースから三年の月日が流れ、彼が27歳になろうとする年の出来事だった。
若干24歳でデビューを果たし、コンスタントなペースで3枚のアルバムを発表したものの、セールス面では実績を残せなかった彼は身も心も疲れ果てていた。
そこで彼はレコード会社の援助を受けてロンドンに渡った。
それは自身の人生において、初めての海外渡航でもあった。
アメリカでの創作活動に行き詰まった彼を乗せた飛行機がカリフォルニアを飛び立ってイギリスに着いた頃、ロンドンでは産声を上げたばかりのパンクバンド、ザ・クラッシュが「アメリカにはもううんざりだ!」と歌っていた。
それから数ヶ月に及んだ滞在中に、彼はこの「Tom Traubert’s Blues」を書き上げた。
それは異国の街の夜を彷徨う放浪者の視点で、ボロボロになった自身の“孤独感”や“やり切れなさ”を描いたトム・ウェイツ流の叙情詩だった。
「裏通りの兵隊達」
「旅人の守護聖人であるクリストファーのメダル(お守り)を失くしたこと」
「薬の売人と冷酷な看板」
「ストリッパーの女」
「殺人犯を追いまわす捜査網」
「思い出を売る亡霊」
「車椅子に乗った老いぼれた爺さん」
「びしょぬれの靴」
「血と酒の染みがある汚れたシャツ」
「夜警の男」「街の清掃員」
などなど、その歌詞の中には、人間同士の普遍的な繋がりや最後に残ったギリギリの自尊心の痕跡を辿るようなメタファーが並べられていた。
そして彼は、このロンドン滞在の間に新曲を次々と書きためていった。
それらを「早く形にしたい!」という気持ちから、1976年の7月にレコーディングが強行された。それは、たった5日間という彼の驚異的な集中力が完成させた“名盤”となった。
また、彼はこの曲に関してあるインタビューでこんな風に語っている。
それは曲の誕生から約10年が経った1987年のことだった。
確かイギリスで凄くウケがよかったね。
「袋(マチルダ)と踊る」ってことは、旅をしてるってことさ。
ガールフレンドと一緒じゃなくて、ひとりで放浪の旅をしてるんだ。
俺にとっては初めてのヨーロッパで、母国を遠く離れて金も持たずに、街の隅っこで酔っぱらってる兵隊みたいに行き場を失っていたんだ。
ホテルの鍵は持っているのに、自分のいる場所がどこだかわからない。
当時はそんな気分だったよ。
あのロンドン渡航から40年が経とうとしている今も、この曲は多くの人達に愛され続けている。
誰もが人知れず抱えている“どうしようもない孤独感”を癒すように…今夜も何処かの街角で酔いどれ詩人の歌声が響いている。
放浪の旅に出よう、そう旅をするんだ
お前は俺と一緒に旅に出るんだ
【解説】
この歌詞に出てくる “Walzting Matilda”とは、19世紀の末にオーストラリアの俗謡詩人バンジョー・パターソンが、スコットランド民謡を基にして書いたと言われているオージーの愛唱歌のことを指す。
“Matilda”は荷物・頭陀袋(ずだぶくろ)のことで、「マチルダを踊る(Walzting)」というのは「(荷物を持って)放浪の旅をする」といった意味となる。
“言葉の魔術師”とも呼ばれているトムが、この楽曲の歌詞に“Walzting Matilda”を引用した理由に、べトナム出征兵士の間で使われた「ヘロインを射つ」という意味(スラング)を忍ばせているという俗説もあるのだが真相は謎のままだ。
♪Walzting Matilda/スリム・ ダスティ
<関連コラム>
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